7月のコラム 夏の合言葉
この季節になると、会う人ごとに「暑いですね」と言葉を交わします。
よく考えると不思議な言葉です。相手も暑いことは分かっていますし、新しい情報でもありません。それでも私たちは、自然にこの一言を口にしてしまいます。
私自身は、冷房が効いた場所にいることの方が多いので、「暑いですね」と言われてもピンとこず「実は寒いくらい」と感じていることも少なくありません。それでも、この時季になると自然と「暑いですね」と口にしています。
「暑いですね」は天気の話ではなく、
「お元気ですか。」「無理をしていませんか。」「今日は大丈夫ですか。」
そんな相手への関心を伝える、いちばん短い言葉なのかもしれません。
職場でのコミュニケーション不足が問題になることがあります。
「もっと部下と話しましょう。」「職場を活性化させましょう。」
そう言われても、何を話せばよいか分からないという方も少なくありません。でも、難しく考える必要はないのかもしれません。
「おはようございます。」「お疲れ様です。」「頑張っていますね〜。」
そう声をかけることは、相手に「あなたのことを気にかけていますよ」と伝えることでもあります。
仕事とは直接関係のない雑談は無駄だと思われることがあります。
でも、仕事の話しかできない職場よりも、「暑いですね」「エアコン、ちょっと効きすぎていませんか?」といった何気ない会話が交わされる職場の方が、「今日は少し元気がないかな」「何か行き詰まっているようだな」と、小さな変化に気付きやすくなります。また、「そうだ、ついでにあの件について意見を聞いてみよう」と話が自然に広がることもあります。
人は、自分に関心を持ってくれていると感じられる職場では、安心して働くことができます。自分の存在が大切にされていることが実感できるからです。
そのきっかけは、大げさな面談や制度ではなく、案外毎日の何気ない一言なのかもしれません。
話しかけようとすると、つい何を話せばいいのか考えてしまいます。
でも、「暑いですね」「暑いねえ」。そんな夏の合言葉のような一言が、人と人との距離を少し近づけてくれるのかもしれません。
2026年7月 水田かほる







